AFCアジアカップ 1次リーグD組の日本はイラクに敗れD組2位陥落となった。
それまでは国際マッチ10戦負け無しであった日本。(2023年3月からは10勝2敗1分)
2024-01-19 イラク – 日本 2:1
2024-01-14 日本 – ベトナム 4:2
2024-01-01 日本 – タイ 5:0
2023-11-21 シリア – 日本 0:5
2023-11-16 日本 – ミャンマー 5:0
2023-10-17 日本 – チュニジア 2:0
2023-10-13 日本 – カナダ 4:1
2023-09-12 日本 – トルコ 4:2
2023-09-09 ドイツ – 日本 1:4
2023-06-20 日本 – ペルー 4:1
2023-06-15 日本 – エルサルバドル 6:0
2023-03-28 日本 – コロンビア 1:2
2023-03-24 日本 – ウルグアイ 1:1
いったい、細部においてどんな変化があったのだろうか。
日本が負ける試合の特徴とは?
それぞれの試合のスタッツを分析すると、日本が敗れる試合に特徴的な「負けスタッツ」が現れていることに気付く。
以下に「ネガティブに増えるスタッツ」と「ネガティブに減るスタッツ」として、上記の13試合から定量的に気になった指標を挙げてみる。
ネガティブに増えるスタッツ3選
① ボールロスト回数および奪回数が増える
全てのエリア(敵陣内・ミドルエリア・自陣エリア)においてのボールロスト回数が勝利試合の平均値を上回る。故に、ボールの総奪回数、特に「自陣での奪回数」も勝利試合の平均値をネガティブに上回る。
② 総デュエル回数が増える
負ける試合ほど、総デュエル回数(地上および空中戦)が増えている。これは上記のボールロストとも関連し「無駄にデュエル回数が増えている」もしくは「相手にデュエル回数(接点創出数)を増やされている」という捉え方もできる。
③ ロングパスの割合が増える
これは結果論として、苦しいロストを回避するためのロングボールも増えてしまうことが示唆される。戦略的にロングボールを使えているのか、苦肉の策としてのロングボールなのか、その差は非常に大きい。
ネガティブに減るスタッツ5選
① シュート数および枠内シュート数が減る
結果論でもあるため説明は割愛。
② ファイナルサードでの攻撃回数が減る。
様々なアクションを伴う、ファイナルサードでのフィニッシュワークが減少していることが数値から分かる。この辺は非常に奥が深い話。
③ ミドルシュートが減り、レンジも狭くなる
加えて、ミドルシュートの総数も減り、打てるレンジも狭くなっている。焦れば焦るほど、攻撃のバランスも崩れることがある。
④ ポゼッション時のパス本数が減る
相対的なポゼッション能力問題が大きいが、ボールを受ける回数が減り、相手のプレスが日本のポゼッション能力を上回り自分達のリズムが作れる時間が減っているとも言える。無論、その場合のプランも重要となる。
⑤ 攻守デュエルの成功回数が減る
総デュエル回数も増やされ、デュエルの成功回数でも負けてしまう。上記と併せて、ゲームもコントロールできずに、攻撃回数も増やせず、要所要所のデュエルでも負けるという状況はさすがに苦しいゲームも増えてくる。
総論
「球際で負けない」ということは当然のことであるものの、仮にこのデータから「戦略的にデュエル回数を増やしてくる世界の屈強な対戦国」が現れてきた場合に、「無駄なデュエルを作らせない」ということも日本人が日本人特性を理解し、現実的に世界で “目の前の試合” で勝利するために工夫すべきポイントなのだと思われる。
「戦略的に対戦国にデュエル回数を増やされてしまう状況」における日本代表の戦い方、リアルタイムの状況判断には今後も注目していきたい。
🖋 岩崎 勇一郎
J3リーグFC大阪 強化担当・データサイエンスディレクター (クラブ戦略室マネジメントと人材スカウト)
経営学とデータサイエンスでJリーグクラブの組織戦略と選手スカウト戦略を設計/ 指導者としては國學院久我山高校で第101回 全国高校サッカー選手権大会出場・日本高校選抜選手輩出、早稲田大学ア式蹴球部でJリーガー輩出・引退後選手の社会接続など/ 早稲田ユナイテッド代表 /産学官連携型のJリーグクラブ設計 / 早稲田大学卒・大学院修了、MBA(経営学修士)および工学博士(遺伝子工学)
Twitter:https://twitter.com/iwasaki_wu
サッカーデータサイエンス系執筆
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