AI時代でも止まらない選手たちの価値 —世界移籍市場は2兆円の熱狂へ
AIが戦略も経営も最適化する時代。だが、サッカー移籍市場だけは例外だ。2020年のコロナ禍の落ち込みを経て、2023年には1.4兆円、2025年には2兆円超えの予測。人間の才能にかける情熱と資金は、AI普及の波にも揺るがない。

別次元を走るサッカー国際移籍市場
AIが何でも効率化する時代だ。仕事も戦略もほとんどの意思決定がデータに依存する。しかし、サッカーの移籍市場は別次元を走っている。
2020年、コロナ禍で国際移籍総額は約8,000億円に落ち込んだ。しかし、翌年から反動は猛烈で、2023年には1.4兆円、2025年には2兆円超えの見込みまで跳ね上がる。世界中のクラブが選手を奪い合い、その市場は拡大の一途だ。
“人間しかできない表現” という優位性
なぜ、AI全盛の時代に選手の価値は高騰するのか。それはサッカーが「人間しかできない表現」の舞台だからだ。ゴール前での一瞬の閃き、華麗なドリブル、決定的なパス。それを形にできるのは人間だけ。AIは分析と戦略の補助を担うに過ぎない。
さらに、移籍市場を支えているのはピッチだけではない。放映権収入、スポンサー、ファンの熱量、国際投資。これらが絡み合い、選手一人ひとりの価値を押し上げる。Jリーグも規模としては小さいが、アジアと欧州をつなぐパイプ役として確実に存在感を増している。
逆説的に言えば、AIが効率化を進めるほど、「代替不能な人間の才能」に資金は集中する。そしてサッカー移籍市場は、その最前線なのだ。
Jリーグ・日本サッカーの可能性
上記のように、世界のサッカー移籍市場は2023年に約1.4兆円、2025年には2兆円超えの見込みと、爆発的な規模で拡大している。
一方、Jリーグのクラブ全体の移籍関連費用は2024年時点で約87億円と、世界市場の1%未満に留まる。規模の差は桁違いだが、国内市場もアジアや欧州との接続で徐々に存在感を増している。円換算やインフレの影響で数字の印象は変わるものの、Jリーグは依然として世界市場に比べると小規模であり、選手の国際移籍への挑戦が価値を生む構造は変わらない。
次世代の日本サッカーはこの国際移籍市場にどこまで存在感を強められるのか? 引き続き、Jリーグクラブの視点からもこのマーケットには注目していきたい。

🖋 岩崎 勇一郎
J3リーグFC大阪 社長付 強化ダイレクター / データサイエンティスト
経営学とデータサイエンスでJリーグクラブの組織戦略と選手スカウト戦略を設計/ 指導者としては國學院久我山高校で第101回 全国高校サッカー選手権大会出場・日本高校選抜選手輩出、早稲田大学ア式蹴球部でJリーガー輩出・引退後選手の社会接続など/ 早稲田ユナイテッド代表 /産学官連携型のJリーグクラブ設計 / 早稲田大学卒・大学院修了、MBA(経営学修士)および工学博士(遺伝子工学)
SNS:https://twitter.com/iwasaki_wu
サッカーデータサイエンス系執筆

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