長いJリーグシーズンも劇的な優勝争いで幕を閉じ、ACL出場権争い、降格争いも見ごたえがあった。
この時期にチームの成績以外にしっかりと目を向けたいのが選手の契約更改だ。
多くのJリーグチームの公式戦日程は12月で終わる。そこから新チームが始動する2月頃までの時期に保有元で報酬を支払う側のクラブと、成果を査定してもらい契約条件にサインする個人事業主としての選手、の間で行われる。
プロ野球界ではメディアに大々的に取り上げられ、誰が、前年度の何千万円アップの、いくらでサインなどという情報は耳に入ってきやすいがサッカー界ではそれほど表立って情報は入ってこない。(○○選手が引退発表や○○監督が退任表明はよく聞くが。)
そこで本記事では2017年(開幕前1月時点)のJ1チームの所属人数と推定年俸についてまとめてみた。
参考はサッカー専門誌「ELGOLAZO」のJリーグ選手名鑑2017
2017シーズン(2017開幕前1月時点)参考サッカー専門誌ELGOLAZO
分析対象:J1リーグ18チーム
分析内容:
1チーム所属人数
- ポジション別内訳
- 年齢別内訳
全選手平均年棒
- 1チーム選手総人件費
- 年齢別平均年棒
- ポジション別平均年棒(一人あたりとチームあたり)
- 外国籍選手年棒
<所属人数>
18チーム平均30.8人
最小23人
最大41人
総数555人
40人超えのチームはJ3カテゴリーにおいてセカンドチーム登録をしているクラブ。
最小のチームは選手補強の途中段階での数字であり、あくまでも1月時期参考だ。
平均すると30人前後だった。
総数では555人という数字。
・ポジション別所属人数
GK68人(12%)
DF165人(30%)
MF226人(40%)
FW96人(18%)
中盤の選手が4割を占め、GKとFWが少ない模様。そもそものポジション数から考えれば妥当である。がしかし外国籍選手の多くはGKとFWという事実もある。
・年齢内訳
17歳以下 0人(0%)
18-21歳 7.1人(23.1%)
22-25歳 7.6人(24.7%)
26-29歳 8.1人(26.5%)
30-33歳 5.5人(17.8%)
34歳以上 2.4人(7.9%)
先日発表されたFC東京の久保建英、平川怜の両選手が17歳以下のプロ選手となった。
ベテラン選手は極端に少なく30歳を境にぐんと少なくなっている。
<年棒>(推定)
全選手平均2223万円
最小380万円
最大1億5000万円
高卒ルーキー選手の最低推定年棒が380万円であった。最も多く稼いでいる選手でも世界基準でみれば決して驚くべき数字ではないが、日本企業の会社員の平均給与は500~600万円くらいだと想定すれば高額だ。
・1クラブ選手人件費
総額平均6億8493万円
最小3億2598万円
最大12億3674万円
全クラブ総額128億4758万円
J1リーグの中でも4倍程度の差があることが分かる。
しかし近年は多くの資金があるチームも残留争いをする可能性も十分にあり、実際に鹿島、横浜FMのみであることからもサッカーというスポーツの難しさがよくわかる。
・年齢別平均年棒
17歳以下 0万円
18~21歳 622万円 4年間 2488万円
22~25歳 1578万円 4年間 6308万円
26~29歳 3069万円 4年間 1億2776万円
30~33歳 3882万円 4年間 1億5528万円
34歳以上 4191万円 4年間 1億6764万円
ここが個人的には一番注目したいところ。
プロの世界では年齢が上がるにつれて年棒も右肩上がりに上がる傾向が見て取れる。
しかし、裏を返せばプロの世界に残っているのは限られた精鋭選手だけで必然的に希少価値が高く年棒も上がるデータになっている。
あくまでも平均の数字であり高低のレンジはかなり広くなっていることも事実。
・ポジション別平均年棒
一人あたり
GK 約1835万円(4位)
DF 約2149万円(3位)
MF 約2326万円(2位)
FW 約3137万円(1位)
やはりサッカーの一番の醍醐味は得点といったところであろうか。
チームの結果に対してよりダイレクトに影響を与えるポジションが高いようだ。
GKはFWの6割弱で大きな所得差がある。
GKに対する評価が低いことは日本でGKの人気がでない1つの要因かも知れない。
・1チームあたりポジション別人件費総額平均
GK 約12億4795万円(4位)
DF 約35億4649万円(2位)
MF 約52億5600万円(1位)
FW 約30億1226万円(3位)
ポジション別所属人数比から考えてMFが一番高額となるのは必然だがDFは全体の3割を占めているのに対して2割弱のFWと同程度の金額だ。
世界基準ではどうなっているのかもとても興味が沸く。
<外国籍プレーヤー>
全選手平均2703万円
最大1億5000万
最小380万円
外国籍選手が必ずしも高額プレーヤーとは限らなくなってきていると言える。
それでも一部の有名選手は1億円超も多数いた。
外国籍選手のみの年棒はJ1リーグ全体の平均推定年棒より、500万円程度高いのは事実
・ポジション別平均年棒
一人あたり
GK 約1624万円(4位)
DF 約1644万円(3位)
MF 約2660万円(2位)
FW 約4884万円(1位)
やはりストライカーが多く稼いでいる。GKとDFが同程度の金額なのは近年の外国籍GK選手の活躍が物語っているように思う。
・1チームあたりポジション別人件費総額平均
GK 約2億9240万円(4位)
DF 約2億9596万円(3位)
MF 約4億7873万円(2位)
FW 約8億7912万円(1位)
クラブが外国籍選手に求める比重が高いのは、やはりゴールのようだ。
浦和レッズがラファエル・シウバを獲得したことは今シーズンにおいては最たる好例であろう。
・全体における外国籍選手人件費割合
GK 約23.4%
DF 約8.3%
MF 約9.1%
FW 約29.2%
GKとFWが多く在籍しているようだ。
外国籍選手を紐解くキーワードは「ゴール」ということがここでも見て取れるようだ。
・あとがき
これらの数字から何が読み取れるのか?
引退時期は?どのポジションならより多く稼ぐことができるだろうか?
競争相手が多いポジションは?
外国人には多く人件費を割いているのはどのポジション?
チーム選手の総人件費はどれくらいなのだろう?
もっと深く掘り下げるなら、クラブにとってたくさんの人件費を割きたい人材とは?
息の長い選手か短命で爆発的に活躍か?等々
いろんな角度、視点から事実を読み取って自分なりの解釈をして欲しい。
【筆者プロフィール】
岸本隆介
早稲田ユナイテッドU-15監督・文武両道キャリアアドバイザー
青年期までJリーグ下部組織でプレーを続け高校サッカー選手権にも出場。
立命館大学へ進学後、サッカー指導を本格的に学ぶためJapanサッカーカレッジへ。
現在は早稲田ユナイテッドU-15監督として、学業とサッカーの両立を文武両道キャリアアドバイザーという立場から指導
【編集者プロフィール】
岩崎勇一郎
早稲田ユナイテッド代表
文武両道・グローバル教育型のプロサッカークラブを目指す早稲田ユナイテッドの代表を担う。トップアスリートのデュアルキャリアやセカンドキャリアの整備を進め、スポーツ人生と仕事(社会貢献)が両立する世界を目指す