WASEDA UNITED BLOG

【スプリントLab】捻挫について
スクール事務局(office)

 

この週末に都内で行われた日本臨床スポーツ医学会学術集会に参加してきました。その中でサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、大宮アルディージャ、鹿島アントラーズ、ジュビロ磐田のそれぞれのチームドクターが演者となり、サッカー現場での足関節捻挫をテーマにしたシンポジウムを聞いてきました。というわけでスプリントとは少し離れますが足関節の捻挫について書きたいと思います。

1. 足関節捻挫とは

サッカー選手において足関節(足首)捻挫は最も多い怪我であるとされています。足首(距腿関節)を内側にひねり、外側の靭帯(前距腓靭帯や踵腓靭帯)を損傷する内反捻挫が最も多く、外側にひねって内側の三角靭帯を損傷する外反捻挫は稀です。

また、腓骨の骨折や遠位脛腓関節の損傷を合併することもあります。

2. 足関節内反捻挫の重症度分類

グレード1:前距腓靭帯の不全損傷

グレード2:前距腓靭帯の断裂

グレード3:2本以上の靭帯の断裂

この分類は捻挫を扱う準医療資格である柔道整復師の養成校で教わるものとは違いました。サッカーにおいてプレーが続行できるかというところに焦点を当てた分類であるように思います。グレード1はプレー続行○、グレード2はプレー続行△、グレード3はプレー続行×とのことです。

グレード2つまり前距腓靭帯断裂でも場合によっては続行できるそうで、これは驚きました。ただあくまでプロレベルの話で、子どもや大きな捻挫が初発の場合は行けそうでもダメでしょう(おそらく痛みと腫れで無理だと思いますが)。

3. 応急処置

足関節捻挫に限らず、基本的に外傷に対してはRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を行うことが基本と言われています。

・安静

医学的に考えればグレード1でも安静にすべきですが、スポーツではそうもいかない場合もあります。ちなみに復帰までかかる期間は1週間以内の選手が多く、3週間以内に復帰する選手がほとんどだそうです。しかし、3週間以上かかる場合は復帰まで6〜8週間かかるようです。

・冷却(アイシング)

近年アイシングについては否定的な意見も出ていますが、今回のシンポジウムでは特にそういった話は無く、アイシング含めRICEの徹底をするという話がほとんどでした。

個人的には捻挫の場合はグレード1で痛みが激しい→アイシング、グレード2・3→アイシングというのが良いように思います。

・圧迫および挙上

この2つの目的は腫れのコントロールです。現場レベルでも文献レベルでも、アイシングで患部を冷やすよりも圧迫して腫れを引かせる方が大事とよく言われています。今回のシンポジウムでも、とにかく腫れさせないことと腫れを早く引かせることを強く推奨していました。

とにかく圧迫はマストということで間違いないでしょう。挙上に関しては皮下血腫が思いっきり出てる場合には睡眠時間を削ってでもずっと足挙げて血腫を移動させろという先生もいらっしゃいました。実際それでかなり変わるそうです。

・番外編:穿刺

これは関節内に針を刺して関節内に溜まっているものを抜くというものです。やはりこれも腫れさせない・腫れを早く引かせることと関連していて、関節内の状況を変えるとこれはかなり効くそうです。医師でないとできませんが、今後はアスリートの足関節捻挫に対する穿刺は注目トピックになるかもしれません。ちなみにやるのであれば受傷したその日にやるのが良いそうです。

4.治療

治療は保存療法で行います。足関節捻挫での手術適応は滅っっっ多にありません。外固定でギプスを使うことはほとんど無く、グレード3でもシーネでの固定が多いようです。ADLのことを考えれそうなりますね。

5. 子どもと大人における対処の違い

足関節捻挫は発生頻度が高い上に軽く見られがちな怪我であるため、小中高大とサッカーをしてプロになった頃にはもう既に足首がボロボロになっているということはよくあります。

大切なのは初発の捻挫をしっかり治すことです。しっかり治療せずにすぐに復帰を繰り返していると簡単に不安定な足関節が出来上がってしまいます。親・指導者は「たかが捻挫」という意識を変え、整形外科や接骨院に受診させ適切な治療とリハビリを受けさせて欲しいです。

また、大人に対しては逆に過保護にならないことも必要です。もともとボロボロな足関節になってしまっている場合、何週間も離脱させたからといって完璧な状態になることはありませんし、特にプロの場合長期離脱は生活に直結することもあります。できるようになったらテーピングなどのデバイスで対応し、あとは普段の練習と並行して足関節周囲筋群の筋力トレーニングや固有感覚トレーニングで安定性を高めてやるのが良いでしょう。

6. 試合中の怪我 プレー続行できるのか・できないのか

筋肉・骨の損傷はプレー続行できないが、靭帯の損傷であれば基本的にはプレー続行可能という話でした。もちろんやって良いかという問題とは別ですが。今回のシンポジウムの演者の先生方は相手がプロ選手なので、足関節捻挫の場合はまず立たせてステップを踏ませ、それができて選手が行くと言えば行かせるそうです。やはりプロレベルでは足関節捻挫でプレー続行不可能ということはほぼ無いそうです(グレード2以上か骨損傷or遠位脛腓関節損傷合併くらい)。もちろん動きが悪くなったり大事を取ったりして交代させられるということはあると思いますけどね。

これは私の個人的な考えですが、小中学生は一旦立ち止まってしまうくらいの捻挫であればとりあえず止めさせて適切な評価・処置を行うべきであると思います。高校生以上は状況によると思います。

今回はいつもに比べて長い上に専門用語が非常に多くなってしまいましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。