WASEDA UNITED BLOG

早稲田ユナイテッド選手紹介No.2【長井章浩〜後編〜】
広報

大学での悔しさを胸に、長井は社会人になった。就職先は誰もがうらやむ大手広告代理店。
しかも、「最終的には世の中からの評価を勝ち得たかった」と、
数社ある内定先方から一番厳しい道をあえて自分に課した就職だった。

「自分の不得手だと思う部分で頑張ることが一番成長する。」

やるからには負けたくない。根っからの負けず嫌いの根性は、就職活動でも発揮された。誰よりもストイックに自分と向き合い、就職希望先を調べあげて勝ち得た、計算通りの勝利だった。

夢を持って入った大学、そこで感じた劣等感、それをバネに手に入れた就職。
そして、新たなフィールドとして選んだ早稲田ユナイテッドも創設から順調にカテゴリーをあげていった。
順風満帆にみえ、ここからが社会人選手としての再スタートという、社会人4年目、チームが都リーグ1部昇格した年、にサッカーの神様はまた一つ試練を与える。

原因不明の病。面会すらも容易に許されない環境での治療。
せっかく新たな環境でのプレーに夢膨らませていたはずが、6ヶ月間まともに走ることすらできなかった。
華々しい再起とはかけはなれた、むしろマイナスからのスタートを余儀なくされた。

それでも彼は走り続けた。むしろ、その経験があるからこそ、今も自分を追い込めるのかもしれない。

「病気でサッカーできない6ヶ月、いろんなことを考えることができた。」

249084_449031531857283_1318096398_n

“普通”の社会人なら、病気をした時点で仕事を優先することを選択し、復帰後はサッカーから離れるかもしれない。でも、彼にとって病気は、より一層サッカーへの強い思いを奮い立たせるカンフル剤となり、再び真剣にサッカーと向き合う機会を与えた。

「浪人したことで(何事も)人と同じことをやっても勝てないと実感した。それは、量なのか質なのかっていう点だったり。大学サッカーは、練習時間や練習環境にある種、制限がないから、個々の能力に左右される部分が多いと思う。勉強して、サッカーしてという意味では、全員平等。でも、社会人は仕事の環境や置かれている立場など、それぞれの制限が違う。平日早く仕事が終わる人もいれば、遅くまで仕事で練習できない人もいる。それが社会人サッカーの面白さ。制限があるからこそ、工夫のしがいがある。社会人は、それぞれの制限をうまくつかって、頑張れば、頑張るだけ結果がでる。」

『制限をうまくつかう』という表現が実に彼らしい。“普通”なら制限はハンデだが、だからこそ工夫を凝らして成果を追う。
実際に、彼はチームの平日練習(火・木曜の19:00〜)がない日も自身でトレーニング施設に通い、勤務後もしくは勤務の合間を縫ってトレーニングに励んでいる。その成果がベストイレブン選出の要因であることは間違いない。

病気を契機に「全ての優先順位をサッカーにした」と言い切る覚悟にサッカーの神様は微笑んだ。
だが、あくまで目標は自身のタイトル獲得ではない。

 537221_586786068013635_279911521_n写真:東京選抜vs埼玉選抜時(前列3番が長井)

今後の目標を聞くと、少し黙り、はっきりとした口調で言い切った。
「目標は、自分が常に試合にでつづけて関東に上がること。」

昨年度、個人としてのタイトル獲得は果たしたものの悲願だった関東昇格の夢は果たせていない。
そして、今期、関東をかけて再び東京都1部リーグを戦うチームの中で、長井は若手の台頭による激しいレギュラー争いの中にいる。開幕戦はスタメンで出場したものの、ベンチから試合を見る機会も増えている。

「チームのために頑張って試合に出る。イコール自分が信頼されることだと思う。今後は、どこまでできるかわからないけど、彼ら(前編記述の同期)に負けたくないし、年齢に伴って挫折はあるだろうけど、できるまでやりたい。ユナイテッドで頑張ることで、小さい組織がどう強くなるかを主体性をもって考えることが、絶対将来プラスになる。遊びじゃないし、将来社会人としてプラスになるからこそ、今しかできないことを。それは仕事も。今の会社でも、一番と思われる仕事をしたい。誰からも信頼される社員になりたい。」

大学入学時はどちらかと言えば、“自分”に焦点を当てる話が多かったが、話をするごとに、“チーム”、“組織”に対する思いが増えてくる印象だ。

それは、近年チームに増えてきた若手に対しての思いに込められた言葉にも、その強く感じた。

「(社会人になってもサッカーをやるなら)覚悟をもってやれって思う。自分が選んでサッカーやるなら、中途半端にやるな。土日だけサッカーやって、遊んで、適当にやって、全部が中途半端になってたことに気づいた一、二年目。でも、真剣に向き合うようになった今は、苦しいことも増えたけど、一勝一勝、一試合一試合の重みもおおきくなった。去年の青梅戦(6-0で勝利)、OSSAで関東出場を決めた試合、関東大会で負けた試合・・・。ワンプレーで鳥肌がたつ、涙が出ることは、仕事やサッカー以外じゃ、そう経験できることじゃない。もちろんサッカーは20年やってて、仕事はまだ5年だけど。(今矢)監督がよく言うけど、今しかできない。できるできないではなく、やってるかやってないか、そういう覚悟があるか。」

チームを創設期から支えてきた先輩として、少し前を歩く社会人の先輩としての若手への厳しくもあり優しい言葉。でも、最後には

「ま、といいつつほとんど自分に言ってるんだけどね。」

と、誰よりも自分に厳しい部分も忘れなかった。そんな長井が期待を寄せる選手が今期キャプテンを務める菅田恭介だ。

「今までは(年齢が)上の選手がリーダーシップをもってやってきたけど、下の世代で初めてユナイテッドを強くしたいという思いで入ってきた選手だと思う。うまい選手はいっぱいいたし、海外挑戦で活躍した選手ももちろんすごいけど、1シーズンフルでユナイテッドで戦った選手はあまりいないので、ああいう若手にもっと入ってきてほしい。」

チームのためを思うからこその言葉。そこには、新旧キャプテンの目には見えない“絆”を感じた。

1069802_476593819101054_625580727_n写真:上列左から2番目が菅田、3番目が長井

「ベストイレブンは素直に嬉しかった。」でも、あくまで『ベストイレブン“は”』だ。大学時代に欲しかった個人の達成感は満たされたのかもしれない。でも、まだ物足りない、鳥肌が立つような、勝って涙をながせる瞬間を目指すことが今の長井の原動力だ。

関東昇格に向けて、チームのために、そして、大好きなサッカーを通して、“成果”を残すために残りのシーズンも最前線で走り続ける。